
5. アンダルース・ミュージック
1. 出会い フェズの家族と友達
2. フェズ町歩きT
3. スークを歩く・スークで迷う
4. 陶器地区Potiers Quartier
6. フェズ町歩きU











アンダルース・ミュージックという音楽、知らなかった。
ちょうど知り合うことのできた彼らから、
モロッコらしいフェズらしいこの音楽を聴いた。
重みのある響く音楽だった。
朝、約束の時間にオトマニ家へ着いて、みんながまだ寝ていた。
コレがモロッコ時間か〜なんて思っているうちにお兄ちゃんが眠そうにしながら私に微笑んで準備をする。
「行こうか」
促されておにいちゃんと二人目的地(いったいどこ?)へ歩き始めた。
その道はコレまで商店などの目印になるものがあった道とは違い、人が生活をするエリアだった。だから私にはただただ入り組んだ道をぐるぐるぐるぐる、ずんずんと進んでいった。ふと角を曲がって正面にコレまで見た家々とは違う入り口が出た。
「ここだよ。僕たちのアンダルース・ミュージックの博物館なんだ。」
私は1歩を踏み入れた。アンダルース・ミュージックの世界。
中にはいろいろなアンダルース・ミュージックに関する資料が陳列されていた。楽器だったりコレまでこのアンダルース・ミュージックノ世界を盛り立て活躍してきた人たちの写真など。
しかし、それだけじゃなくてココ、そりゃ、博物館だよ〜。この建物自体が、1318年に建てられたマドラサ(神学校)をそのまま使っているんだもん!
思わず口が開く。確かに博物館として使っているけど、みんな鉄パイプのいすを座ったまま引きずったりさ、あまりに普通の場所として歌の練習場として使っているんだもの。
そんな今と昔のあり方が私はたまらなく好きだ。
アンダルース・ミュージック
モロッコのフェズやラバトといった古都を中心として今も残る音楽で、モロッコにおいて一つの音楽の形を作っている。感覚としては古典音楽・宮廷音楽がそれに当たる。
この音楽が生まれたのはイスラム勢力が全盛を極めようとした頃。アラビアと呼ばれる中東から次第にアフリカのマグレブ、西端のモロッコまで勢力を伸ばし、ついにはジブラルタル海峡を渡った。スペインに残る「アンダルシア地方」という「アンダルシア」も元はアラブの言葉からつけられた地名だ。
アンダルース・ミュージックはモロッコだけではなく、他にもアルジェリアやチュニジアその名の通りのスペインなどでも歌い継がれているとのこと。
←左の写真にあるようなヴァイオリンやリュート(上段)を使い伴奏。たくさんの男性歌手によって力強く、時に優しく合唱される。
アンダルース・ミュージックで主に歌われているのはイスラムの預言者ムハンマドについて、愛について、自然について。
それは11のパートがそれぞれ5つのリズムから構成されている。つまり55種類の流れによって作られている。
音楽によって求められる愛や平和や自然、そしてそれにつながる宗教観。
コレはどこの国でも普遍的にいえることだろう。
そこにその土地ならではのリズムと音の組み合わせと風土・文化が加わり、独特な音楽を作り出す。そうここにあるアンダルース・ミュージックがそうであるように。
一つの部屋の大きな入り口を見上げるとやはり美しい細工。ココもまたアルハンブラ宮殿の細工を思い出させる。
目を凝らしてみると、そこには1318の数字。作られた年なのかという質問に、横にいたアブデルファタフがうなづく。
噴水を中心とした美しい中庭のつくり。以前行ったスペインのアンダルシア地方のグラナダを思い出した。イスラムがスペインの国土回復運動に対して最後までその勢力を持った、都である。その都はイスラム建築の美しさを集めて作られた。その中にあるライオンの庭(ライオンの像が円に並び上に噴水をいただいている中庭)が浮かんだのだ。
計算されつくした幾何学模様・アラベスクが美しい。私の大好きなトルコのものともまた、違う美しさがあった。
←お兄ちゃんが一緒にアンダルース・ミュージックを楽しむ仲間に楽譜の読み方や音楽を教える。
彼が言っていた音楽のクラスはこのことだったんだ。
お兄ちゃんの横でちょっと退屈し始めうろつこうとしていた私を弟たち、アブデルマレックとアブデルファタフ、そして遅れてきたメンバーが一緒にこの博物館を案内してくれた。
幼さが残るアブデルファタフかわいい。
いざ みんなで音あわせ。
私の席は左の端っこ
おにいちゃんの横。
写真を撮って戻ると、
「一緒に歌って、歌って」
と何人かに促され、
口パクで歌う。
練習は昼過ぎまでだった。
みんながきちんと時間を取って、この練習に参加する。
誰に「来い」といわれるわけじゃなく、義務感でもなく、みんなは日曜の朝にここに来て、昔からあるこのアンダルース・ミュージックを楽しんでいる。伝統でありながら自然に若い世代も楽しむことができるその存在は、すごい。
みんなで教えあいながら、よりよい新しいアンダルース・ミュージックの形を作るべく、きっと今週も来週も日曜日には彼ら、歌っているのだろう。
私が出会ったオトマニ家
オトマニ家との出会いはすでに「フェズ・出会い」で書いたのだけど、このオトマニ家、ほんとにすごい音楽家族だ。
それはやはりお父様にある。お父様自身が、このアンダルース・ミュージックの音楽家として、海外公演(なんと日本へも)をしたこともある方だ。そのため女の子マジェダはちょっとだけと言っていたが、男兄弟5人は少なくとも一人がヴァイオリンにプラスして弦楽器を中心に他の楽器を演奏できた。お兄ちゃんはヴィオラも得意らしい。アブデルマレックはヴィオラにチェロにギター。アディルはキーボードといった具合にみんなそれは楽しそうに演奏する。
息子のヴァイオリンの響きにお母さんが楽しそうに緩やかに身を揺らしていた。
「お母さん音楽好きなのね。」
「ええ、大好き」
「お母さんは音楽するの?」
「私はしないの。音楽が聞きたくなったら息子の誰かを呼ぶのよ」
そんな風にかわいらしく微笑んでいた。
中だけではなく屋上へあがればフェズの町が一望できる。
いただいたアンダルース・ミュージックに
ついてのパンフレット