


フェズのメディナで行くあてもなく、迷ってみたかった。
複雑に入り組んだ1000年以上の歴史を持つフェズの街。
古きよき都。迷路ともいえるこの街の複雑な作りは、
この街にあるさまざまな人の人間模様のようでもあった。
でも、やっぱりここでも人は微笑んでいた。
入り組んだ街で、でも複雑さの全くない明快な笑顔がまぶしい。





メディナの中心部に位置するルシーフ広場ではバスが発着し、
タクシーに馬車もそこで人を待つ。人が行きかう。
気のせいかこの先の景色なんか映画で見たような・・
朝気持ちよくの目覚め、とはいかなかった。
おきてからの足の先はわずかばかり温かいものの、真に寒さが残る。そして騒音で寝付けなかったせいもあるから。
朝は4時に一度目を覚まし、結局5時半くらいからごそごそと動き始めた。時差ぼけだ。日本とはマイナス9時間。日本でも昼過ぎまで寝ることのない私はそれ以上眠れなかった。
ホテルの人が寝静まる中、部屋から、そして昨日見ることはなかった小さなホテル内を散策。屋上に上って朝焼けに染まり始めた景色を臨む。
トルコで見かける上に伸びる感じがする尖塔とは違うたくましい存在感の1本の尖塔が一つのモスクの脇にすえつけられているモロッコの景色。町のいろんなところで見ることのできる尖塔がイスラムの国へ来たことを実感させる。そして、思わず笑みがこぼれる。朝の礼拝の時間が訪れ、私の耳は、いや町中にその呼びかけである「アザーン」が大きく響いたから。
昨晩約束した例の家族オトマニ家へ9時に約束。
必ず迷うこのフェズのメディナで私一人が行き着くには余裕を持って出発しなければならなかった。早く目が覚めたので時間的心配は不要。
早速と言わんばかりに、まだ早朝の町へ自分を押し出した。
モロッコ・フェズで目覚めた朝だ。改めて自分の旅の始まりを感じた。
朝の町の空気が好き。
息が白くなる朝の寒さをメディナを少しの人が目的地に向かって早足で歩いていた。昨日お兄ちゃんとアブデルマレックで感じたはや歩きはこの町の人の特性か?!
家々は静かで、お店はほぼ全てがしまっていたけれど、だから町の形がわかるような感じ。
すぐ脇の細い小道で人たちが話す声がした。あたたかな湯気が立ち上っているのが見える。
吸い寄せれるようにそこへ向かうと、左手には薄いパンのようなものを開いて中にクリームチーズを挟む朝食のお店。右にはただアターイ(モロッコティー=ミントティー)を出すお店だった。
朝食をとろうと思っていたものの、見つけることができずじまいだったので、嬉しくてすぐに後ろポケットからカンペを取り出して言った。
「ブギーツ ナクル・・・(これが食べたいですと言いたかったけど、「コレ」が言えなかった)
ブシャハール?!(いくら?)」
そこら辺にいたおじさんたちが私のつたない言葉に笑う。
お金を出すとき後ろのミントティーを気にしていた私に気づいたおじさんが「アターイ?」と聞く。「アターイ!アターイ!」ミントティーの分も一緒に払うとそのパンを渡された後で周りのおじさんがニコニコと店の奥に私のために場所を空けてくれた。
食事に温かなミントティーに体が温まった。大きなタンクのような湯沸かし器?からお湯を取り次から次にミントティーが運ばれていく。青々としたミントがまぶしくもあった。
ホテルの屋上から見たミナレット越しの朝焼け
しばらく過ごしてから目的地ともいえる「ルシーフ広場」の場所を聞き店を出た。昨日とは追うすでに違う道からのアクセスだ。出て2本目を曲がろうとしたところで、後ろから心配したお店のおじさんがちょっと追っかけてきて言った「違う違うよ、曲がるのはこっち」あれれれれ?「しゅくらーーん(ありがとう)」
そこを曲がってわずかな場所でまたなんだかおいしそうな香りに吸い寄せられた。揚げパン、ドーナツだ。ふわふわした感じがなんともおいしそう!
おじさんたちが立ち止まってみる私に見やすいようにドーナツを揚げ、そのうち一つをお皿に乗せて私に差し出した。いすも用意してもらって、お客さんや手際よく作り渡す様をまたのんびり眺めていた。
写真を撮ると嬉しそうに微笑んで「送ってね」の仕草をしたおじさんに、住所を聞き、お金を払おうとすると、今度は「いらないよ」の仕草。「ダメダメ!」の仕草でお金をおじさんに渡してホクホクな気持ちとおなかで目的地へ向かった。
揚げパン屋さんのおじさんたち
「音楽の練習」を一緒に見に行くと言うお話でオトマニ家を訪れて、私はヴァイオリンからクラシック?だなんて想像をしていたのだけど、それとは全く違ったこの国・この町ならではのすばらしいものだった。音楽だけではない、その建物も人たちもとてもステキな時間を私に与えてくれた。
朝から昼過ぎまで私は彼らと過ごし、さらに一度別れたものの、夕方に彼らが用で行く新市街への同行を約束していた。
フェズの町にはとても興味があったからゆっくり見たい部分もそれの分だけはあった。でも、この出会いがとても嬉しくて、自分一人の旅では見れない普通にフェズで暮らす人たちの生活の一部が見れることがとっても嬉しかった。
待ち合わせまでの時間、最もフェズを感じることができるメディナの中のフェズ・エル・バリ、その中の大部分を占めるスーク(商店街)を迷うことにした。歩くつもりだったけれど、それは私にとって迷うことでもあったのだ。
スークでどうしても見たい場所があった。
ルシーフ広場の一角。
今日が土曜日と言うこともあって、
温かな日差しにくつろぐ人が
たくさんいた。
のどかな景色。
メディナの中ではたくさんの猫が
我がもの顔に暮らす。
冬でも暖かい昼の陽だまりには
たくさんの猫が日向ぼっこに集まっていた。
←私の後ろにはさらに数匹の猫がいた。
みんなと別れて、町歩きと簡単なでもローカルな食事。改めて一人旅をしばらく満喫して、本日2度目のオルマニ家へ向かう。約束していた時間3時を少し過ぎる頃だった。今朝予定より少し早く行ったときに、モロッコ時間は感じていたので、ちょっとくらい大丈夫なことは知っていた。
昨日からすでに3回目のお宅訪問では、毎回優しいお母さんが笑顔で私を迎え入れてくれている。押し付けるほどのもてなしでもなく、純粋に私が来ることを喜んでくれているこの家がとても好き。
すぐに自分の部屋からアブデルマレックも降りてきて、昨日のお兄ちゃんに続いてまたおうちを案内してくれた。昨日は着いてすぐだったので、どこが誰の部屋かわからなかったけど、部屋の感じとそれぞれのキャラクターがつながってなんか嬉しい。それから自分の部屋へ連れて行ってくれてチェロを聞かせてもらう。
洗濯を手伝っていた5男アブデルファタフと遊んだり、遊びに来ていた親戚の子とじゃれあっていると、いつしか時間は4時を回っていた。さすがモロッコ時間。
帰ってきていたおにいちゃんと3人、新市街へタクシーで向かった。
新市街は待ったく違った面持ちをしていた。
着いたのは新市街のメインストリートハッサン2世通り。メインストリートでありながらヤシの木が広々と生い茂っている視覚的にもゆとりのある町並みだ。
新市街でありながら、お兄ちゃんもそうであるように普通に人々はこちらならではのロングコート、ジェラバを着ている。
歩いて10分ほどで目的地へ着いた。ユースホステル近くの小さな事務所だった。
その中には朝音楽の練習をしていたメンバーの半分ほどが顔をそろえ、お兄ちゃんとアブデルマレックのほかに私のことも迎え入れてくれた。彼らはここでこれからの彼らの音楽の協会のあり方と財源についての話し合いを持つべく会合を開いていた。
少ししてすぐにアブデルマレックがこの周辺を案内してくれた。約20〜30分の散歩。
やはり、というか新市街は人々が現在の便利さもさることながらさまざまなお役所など機能性を求めた感が強く、知るにはいいが、わざわざ見る場所ではない気もした。でも、どこの地を訪れてもこのような現代の文化を持っていながらもあえて、昔からの空間、生活に身をおいていることを思うと、そんな彼らが自分たちの文化であり、ルーツを大切に、誇りを持ってることがうらやましく感じる。
少しして会議(にしてはラフだけど)へ戻る。予定は1時間ほどと聞いていたのだけど、時間は長引く長引く。そんなラフな空気なので他事と話しまくりである。私はもちろん彼らの使うマグレブのアラビア語も、フランス語もわからない。
なんとなくみんなが話すことを表情から想像したり、ちょっとでも聞いたことがある言葉が出ないか探したり、たまに回りの席の子と話したり、そしてちゃっかりお菓子とお茶、ジュースだけはいただく。全くわかってないのだけど、そんな私がここにいることが不思議で面白くて、それほど退屈な時間ではなかった。
終わる時間は8時も近くなっていた。一体私は旅に来てなぜ会議に参加していたのか、考えると笑える。
終わってからみんなと談笑。日本人と接するのが始めての人ばかりだった。日本のことをいろいろ聞かれた。お互いの文化の良さ、民族、価値観だったりを歳の近い友人たちと話すことができることはとても楽しく嬉しいものだった。
寒いにもかかわらず、外での立ち話は長引いてしまっていた。ようやく解散の空気が流れたときにアブデルマレックが私に言った。
「めり、何か日本の歌を聞かせてくれないかな?僕たちは音楽が好きだし、日本の歌をみんな聞きたがってるんだ。」
「すぐに浮かばないよ〜」
「何でもいいよ」
私が歌った途中歌詞を忘れてしまった「故郷」をみんなは喜んで聞いてくれた。
同じ旧市街へ帰るメンバーでバス乗り場までの道のりを約30分話しながら歩いた。
最後はお兄ちゃんとアブデルマレックと私。
二人は私を送るために私のホテルに近いところで降りてきちんと送ってくれた。
ホテルに帰って昨日と同じようにHが私の今日の出来事を聞く。
そして英語があまりできないホテルのお兄さんと私の言葉を訳しながら3人で話をしていた。
夜が更ける。
「めり、明日のお昼よければお食事に招待するよ」
明日のランチはなんだろな〜♪
新市街の目抜き通り
ハッサンU世通り
市民の憩いの場の様相の
ヤシの並木だ

ポストカード 新市街
